健康について語るブログ

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分子栄養学の三本柱とは

分子栄養学の三本柱とは

 

分子栄養学とは物理学者の三石巌先生が構築したもの

三石巌先生は東京大学で物理を専攻され、科学の本をたくさん書かれています。

分子栄養学は生命の基礎の知識に基づき、経験則からではなく科学的な理論から導き出された学問です。

生命現象の根源である代謝がいかに適切に働くような栄養状態とするかといった視点を持っています。

以下に三石先生の「分子栄養学のすすめ」(阿部出版)から引用し、説明していきます。

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分子栄養学の柱は3つです

 1.パーフェクトコーディング理論

2.ビタミンカスケード(ビタミンカスケードモデル)

3.ビタミン・ミネラルの位置づけ

 

1.パーフェクトコーディング理論とは

  生体の中で様々な代謝がおこっています。代謝とは、DNAにあらかじめ記されている化学反応のことです。

 代謝には、DNA→(転写)→RNA→(翻訳)→タンパク質と過程が存在し、生体内では四六時中行われています。このプロセスには、「コーディング」という名前がついています。

このあたりの詳しい説明は分子生物学に譲ることにします。

 そして、この代謝の結果、身体を構成する物質を生成したり、恒常性維持機能(ホメオスタシス)という生体を維持する調整メカニズムをはたらかせることができています。

 このように我々の身体を維持していくためには、様々な物質を作り出す必要があります。

  コーディングの終点にある物質がそのまま利用される場合もありますが、それに続く過程がある場合があります。それはこのタンパク質が「酵素タンパク」である場合です。

その時は、この酵素が「基質」に働きかけて何らかの代謝産物を作ることになります。

 

これを図式化すると次のようになります。

 

DNA→(転写)→RNA→(翻訳)→酵素タンパク→代謝産物

 

分子栄養学ではこの過程に「コーディング」という名称を与えています。

したがってパーフェクトコーディング理論とはこの過程がパーフェクトつまり完全に行われるためにはどのようになればいいのかという考え方です。


2.ビタミンカスケード(ビタミンカスケードモデル) 

カスケードとは段々滝のことを意味します。

メガビタミン主義という思想がありますが、この説明にカスケードを用いたものをビタミンカスケードモデルです。

ちなみにメガビタミン主義とは、ビタミンの大量摂取に大きなメリットがあるとする考え方です。

ビタミンは水ではないので、滝にようになるわけでありません。したがってビタミンカスケードモデルとは想像上のモデルです。

摂取されたビタミンは、身体の中でいろいろな代謝に作用します。

ビタミンカスケードモデルでは、ビタミンの作用一つ一つを滝の段と位置付けます。

数あるビタミンの中でも沢山の作用をもつビタミンCを例に挙げて、ビタミンカスケードモデルを理解してみましょう。

 

ビタミンCの作用は50以上もあるといわれています。主な作用としては「壊血病」の予防です。壊血病とは歯ぐきなどからの出血を初期症状とし、死に至る病気です。昔の航海時代、長い航海の間、ビタミンCを含む食品をとらなかったために、多くの船員がこの壊血病でなくなっています。出血の原因は、毛細血管壁が破れることですが、毛細血管壁の強度を保っているものは「結合組織」です。そして、この結合組織の主成分は「コラーゲン」です。

このコラーゲンを作る際に酵素が必要なのですが、この酵素にビタミンCが協同因子として存在ることで丈夫なコラーゲンを作ることができます。

しかしビタミンCがないことにより弱いコラーゲンしか作ることができなくなり毛細血管壁が敗れて出血するというのが壊血病です。

 

ビタミンCの別の作用に抗ストレスホルモンを作る際の協同因子としての働きがあります。私たちは精神的なストレスを受けると副腎皮質で「コルチゾール」や「コルチゾン」とホルモンを作ります。このホルモンの生成過程にビタミンCがに必要なります。

 

壊血病作用と抗ストレスホルモン作用という2段の作用があった場合、どちらがカスケードの上の段と下の段になると考えるかというと、これは遺伝的要素できまる体質によるものと考えます。

そしてその遺伝的要素で決まる体質は酵素と協同因子との確率的親和力というものに依存します。確率的親和力は分子栄養学ではとても重要な概念なので、これはまた別の機会に説明します。

 

3.ビタミン・ミネラルの位置づけ 

酵素の種類は約3000といわれています。つまり酵素を必要とする代謝の種類も同じだけあるということになります。この代謝の大部分が協同因子を必要とします。そして協同因子の多くがビタミン・ミネラルであることを思い出すとその重要性が理解できます。

すべての細胞に共通な作業があります。その一つはエネルギー代謝です。エネルギーを作る作業ですが、エネルギーなしでは細胞はどんな仕事もできません。

もう一つの共通作業はコーディングです。コーデイングとは遺伝子DNAの暗号を解いて酵素タンパクを作り、それによって所定の化学反応を行うといった作業です。この過程でもビタミン・ミネラルが協同因子として必要になります。

このコーディングに関係するビタミン・ミネラルを分子栄養学では「フィードバックビタミン」、「フィードバックミネラル」と呼びます。

 

フィードバックビタミン

A・B₁・B₂・B₁₂・C・E・ニコチン酸パントテン酸葉酸・ユビキノン(コエンザイムQ₁₀)

フィードバックミネラル

ヨード・マグネシウム亜鉛

 

フィードバックビタミンやフィードバックミネラルのようにすべての細胞に必要なものを「全細胞ビタミン」、「全細胞ミネラル」と分子栄養学では呼びます。

ここで全細胞ビタミン、全細胞ミネラルはフィードバックビタミンとフィードバックミネラルだけでないことは、すべての細胞ではエネルギー代謝が必要だということを考えるとわかると思います。エネルギー代謝に必要なビタミン、ミネラルも全細胞ビタミン、全細胞ミネラルとなることも理解できると思います。

 

エネルギービタミン

B₁・B₂・C・ニコチン酸パントテン酸・ユビキノン

エネルギーミネラル

鉄・亜鉛マンガンマグネシウム・銅

 

私たちが食物からとる3代栄養素は糖質・脂質・タンパク質です。

これらの栄養素は摂取した分子のままでは吸収できませんし、利用することもできません。糖質は、ブドウ糖をつないでグリコーゲンにしたり、脂肪は脂肪酸の鎖を延ばしたり、タンパク質はその材料であるアミノ酸の種類を変えたりといろいろと細工をします。

このような変換に必要なビタミン、ミネラルと「変換ビタミン」、「変換ミネラル」と分子栄養学では呼びます。

 

糖質変換ビタミン

A・C・ニコチン酸

糖質変換ミネラル

クロム・モリブデンマンガン

 

脂質変換ビタミン

B₂・B₁₂・C・H(ビオチン)・ニコチン酸パントテン酸

脂質変換ミネラル

マンガン・クロム

 

タンパク質の変換に関してですが、これはアミノ酸の変換と考えていいのでアミノ酸変換ビタミン、アミノ酸変換ミネラル呼びます。

 

アミノ酸変換ビタミン

B₆・B₁₂・C・ニコチン酸パントテン酸

アミノ酸変換ミネラル

マグネシウム・クロム

 

ここまでに挙げたフィードバック・エネルギー発生・栄養素変換は活動するすべての細胞で原則として不断に行われている代謝です。そこで、分子栄養学ではそこで登場するビタミン・ミネラルに対して「全細胞ビタミン」、「全細胞ミネラル」という名称を与えています。

 

分子栄養学で扱うビタミン・ミネラルの位置づけは、ある一つの化学反応が全身の細胞に起こるものなのか、それとも局所的に起きるものなのかという点に着目して行われます。そこから「全細胞ビタミン」、「全細胞ミネラル」というものがでてくることは理解できると思います。